50年以上続く果樹園の「今」と「これから」【木之下拓駿さん 後編】

プロフィール

木之下拓駿さん

いちき串木野市出身。高校時代まで地元で過ごし、福岡県の大学へ進学。卒業後は、福岡県の中学教員として9年勤務。結婚を機に地元にUターンして2年目。

移住スタイル:
Uターン
家族構成:
妻+子ども1人
年代:
30代
職業:
果樹農家
移住元:
福岡県

9年の教員生活を経て、いちき串木野市へUターンし就農した木之下さん。

前編では、その経緯と、いちき串木野市での子育ての様子を伺いました。後編では、果樹園での作業や、今後について詳しく伺います。

広い農園での作業

祖父の代から50年以上続く木之下果樹園。現在の栽培面積は約7〜8ヘクタール(サッカーコート約10面分の広さ)と、地域でも規模の大きい果樹園のひとつです。

いちばん多く栽培しているのはみかん、次いでサワーポメロ(栽培面積は全体の約8分の1)、大将季(少量)と続きます。年間の総出荷量は約150~160トンにのぼります。

この規模を支えているのは、家族だけではありません。収穫や仕分け作業には、パートスタッフも加わります。

右後ろにある機械で、大きさを仕分ける作業を行っています。

考えながら切る「剪定」

2月。収穫が落ち着くと、畑には少しだけ静けさが戻ります。とはいえ、果樹園の1年はここからまた始まります。

まず取りかかるのは剪定(せんてい)。枝を切る作業です。冬から春先にかけて広い畑を回りながら、一本一本の樹と向き合います。

剪定がいちばん難しいですね」と木之下さん。

どの枝を残し、どの枝を落とすのか。日当たりや風通し、翌年の実つきを想像しながら判断します。

剪定の様子

「ずっと考えながらやらないといけない仕事です」

就農2年目。切るつもりではなかった枝を落としてしまったこともあるそうです。苦笑いしながら振り返る木之下さんの姿からは、失敗を糧にして技術を自分のものにしようとする、前向きな向上心が伝わってきます。

もったいないけれど、品質管理のために「摘果」

春が過ぎ、初夏を迎えるころ、樹は白い花を咲かせます。やがて小さな実がつき、夏には摘果(てきか)の時期がやってきます。摘果とは、実を間引く作業です。

「本当は、あまり落としたくないんですけどね。ロスなので」と、生産者としての率直な気持ちをこぼします。

ただ、実がなりすぎると樹は力を使い果たし、翌年に実がつきにくくなってしまいます。また、実が多すぎると栄養が分散し、果実が小さくなるため、品質を守るためにも摘果は欠かせません。多いときには半分近くの実を落とすこともあります。

広い畑を多くの人で管理する木之下果樹園では、判断基準を共有しています。

“この枝より上は全部落とす”って決めています」

樹の上部は農薬が届きにくく、虫の被害や日焼けが起きやすい場所。品質が安定しやすく、収穫もしやすい下側の実を残すための工夫です。このルールがあることで、誰でも作業ができるといいます。

「美味しかったよ」の声

やがて秋。10月上旬になり、みかんが色づき始めると収穫が始まります。コンテナに積まれた果実が倉庫に運び込まれ、選果や仕分けの作業が続く繁忙期です。納品先のスーパーで「美味しかったよ」と声をかけられることもあります。

「直接言ってもらえるのは、やっぱりうれしいですね」

そう笑顔を見せてくれました。

おすすめの食べ方を尋ねると、「やっぱり、そのままが一番ですかね。加工する方もいらっしゃいますが、私は小さいころからそのままでしか食べていないです」と即答でした。

木之下果樹園のみかんは、例年10月上旬から12月下旬まで購入できます。

サワーポメロは、4月ごろまで購入できるそうです。直売所での購入も可能(予約がおすすめ)。

木之下果樹園の柑橘類が購入できるお店一覧
直売所の情報。予約がおすすめです。

今後の木之下果樹園

祖父の代から続く畑に立ち、季節を重ねていく。

現在は就農2年目。まだ分からないことも多く、「まずはしっかりと自立すること」が目標だと話します。

祖父母や両親が築いてきた信頼を受け継ぎ、地域に根ざした経営を続けていくことも目標のひとつ。

そして将来は、柑橘一本で勝負するという軸は変えずに、新しい品種にも挑戦していきたいといいます。実は、すでに試験的に育てているものもあるのだとか。

一本一本の樹と向き合いながら積み重ねる日々の先に、きっと新しい実りが待っているはずです。

移住を検討中の方へ

最後に、いちき串木野市への移住を考えている方に向けてメッセージを伺いました。

木之下さんが「自慢したい」と話すのは、やはり子育て環境です。

0歳からの保育料無償や子ども医療費無償など、経済的な支援の手厚さは、実際に暮らしてみてありがたさを実感している部分だといいます。保育園に通う前は市内の子育て支援センターも利用し、親同士のつながりが自然と生まれる環境にも助けられました。

子育て世代にとって、本当にいい環境だと思います」

都市部のような交通渋滞もほとんどなく、移動のストレスが少ないのも暮らしやすさのひとつです。

また、自然が身近にある点もいちき串木野市の魅力だと話す木之下さん。

「海も山もきれいに見えるところが気に入っています」

昔から変わらない風景にホッとするそう。

一方で、「田舎すぎるわけではない」とも話します。JRの駅が近く、夜遅くまで運行があるので、鹿児島市内での夜の会合にも参加できているといいます。家族で出かけるときには、高速道路があるので県内各地に行くことができ、自然と利便性のバランスが取れていると感じています。

そして何より、人のあたたかさ

散歩をしていると近所の方が気さくに声をかけてくれる。スーパーに納品へ行けば、「おいしかったよ」と直接声をかけてもらえる。過干渉ではないけれど、さりげなく気にかけてくれる距離感があります。

「特に子育て世代には、自信を持って勧めたいまちです」

自然、仕事、家族との時間、地域とのつながり。そのすべてが、いまの木之下さんの暮らしを形づくっています。

  • この記事を書いた人:
    とこ

    生まれも育ちも鹿児島の1児の母。子育て奮闘中!寝かしつけながら寝落ちするのが至福の時間。食べることと喋ることが大好き。デジタル音痴ですが、人との交流を大切に、いちき串木野の魅力を伝えていければと思っています。