【完全版】「かっこいい」に憧れて発酵の道へ
東京から島暮らし経由でたどり着いた場所

プロフィール

塩田亜耶子

いちき串木野市旭町の商店街にある発酵食Lab。
そのオーナーを務める塩田さんに、東京から鹿児島へ移住した経緯やいちき串木野市で暮らす中で感じること等を伺いました。

移住スタイル:
Iターン
家族構成:
夫婦
年代:
40代
職業:
発酵料理研究家
移住元:
東京→薩摩川内市→いちき串木野市

【聴き手=上木寿人(魅力PRライター)、森満誠也(LR株式会社)】

移住に至った経緯

学生時代になりたかった夢

学生時代からじっくりお話聞かせてください!
塩田さんって元々はどちらの出身なんですか?

関西の方で育って、京都の大学へ進学しました。
家庭科の先生になりたかったんですよ。
なので、大学では食物服飾の両方を学んでましたね。

家庭科の先生!
いつ頃からなりたいと思っていましたか?

中学から大学までエスカレーター式の学校で過ごしたんです。
敷地も同じ場所にあって。
私、中学&高校では、大好きな先生や大好きな友達に囲まれて過ごしていたから、「ここの学校の先生になりたい!」って思ってたんですよね。
先生っていう括りの中で私に出来ることといえば家庭科だったので、ここの学校の家庭科の先生になりたいなと。

なるほど!

ただ、結果的に家庭科の先生になれなかったんですよ。
空きがでなくて。
私立の学校だったので、家庭科教員の枠に空きが出ないとその学校では働けないじゃないですか?
枠が空かなかったので、諦めるしかなかった。

(そこまで思えるぐらい好きだった学校、気になる..!!)

就職後の東京での暮らし

ということは、家庭科の先生ではなくて就職されたんですか?

ゼミで服飾文化史を専攻してたこともあって、アパレル系の会社に就職しました。

それは関西で?

最初は関西の支店へ配属されたんですけど、異動希望が叶って1年目の冬には東京へ配属されることに。
そこから4年間ぐらい同じ会社で働いたんですけど、そこから動物王国的な場所で働いたり、「事務系の仕事が出来た方がよさそうだぞ..!!」と思い、派遣で事務の仕事をしたり。

全て関東エリアでした?

そうですね。
食生活を乱しながら、東京生活を満喫してました。
今考えると、すごく荒れた生活をしてたと思います。笑

荒れた生活..?
仕事がめっちゃ忙しかったんですか?

いやっ、とにかく朝まで遊んでたんです。

あ..えぇ!
そっちですね!笑

そっちです。笑
タバコも1日2-3箱吸うし、遅くまで飲んで朝方帰って3時間だけ寝て、また働きに行ってみたいな生活をずっと続けてたんです。

ちょっと..今の塩田さんのイメージからすると、思ってたのと違いますね。笑

違うでしょ!?笑
仕事はすごく平和で楽しかったんですよ。
仕事の忙しさより、遊びの忙しさでしたよね。

丁寧に振り返りながら話をしてくれる塩田さん(写真右側)

体調を崩してからのこと

派遣で事務の仕事をするようになって以降は、わりかし普通の生活をするようになってたんですよ。
朝まで飲み明かすみたいなことは減っていて。
ただ、すぐに体調を崩したんです。

なるほど。

骨の癌だったんです。
やっぱり無理が祟ったんだなって、自分で思いましたね。
それがきっかけで、自分の生活を見直すようになり、大きく色々と変えていきました。

それは塩田さんの人生の中で、かなり大きな転換点ですよね?

ですです。
食べ物とか生活習慣を見直そうって思う、大きなきっかけでした。
そのタイミングでお付き合いしてた人とも別れたので、「よし!これからは自分の人生をどう生きていくか考えよう!」と考え始めたタイミングでしたね。笑

伊豆大島へ行くようになって芽生えた島暮らしへの憧れ

「伊豆大島へ行ったことも私の大きな転換点だった」って何かの塩田さんの記事で読んだんですけど、ここのお話を聴かせてもらっても良いですか?

へぇー..私そんなこと言ってました?笑

言ってたみたいです。笑

最初は旅行で訪れたんですよ、伊豆大島。
マクロビオティックの料理教室で出会った方が、ヨガのインストラクターをしてて。
その方が伊豆大島でリトリートをするっていうので、初めて伊豆大島へ行ったんです。
それがきっかけで、伊豆大島に頻繁に通うようになって。

伊豆大島のどこに一番魅力を感じたんですか?

私自身それまで都会にしか住んだことなかったから、島暮らしは面白いなぁと思うことが多かったんです。
知らないことがたくさんあって。

具体的にはどんなことでしょう?

例えば、海を見ながら「今日はしけてるなぁ」って言う、その言葉がまず私にとってはかっこよかったんですよ。
「しけてるって私も言ってみたい..!!」みたいな。笑

そういう環境に今まで居なかったから、かっこよく聞こえたんですね。笑

そうそう!
海が荒れてて帰りの船が出ない状況になった時も、私は翌日仕事があるから焦るわけですよ。
そんな私に「出ないものは出ないから、焦って考えても一緒だよー」って。
その感覚が新鮮すぎて「すごい良いなぁ、かっこいいなぁ」って思うようになったんです。

おもしろい!

甑島の地域おこし協力隊着任をきっかけに鹿児島へ

私としては島暮らしへの憧れがどんどん大きくなっていて。
伊豆大島でお世話になってたゲストハウスのお父さんからのアドバイスを基に、島暮らし×仕事を探し始めるんです。
そしたら地域おこし協力隊っていうワードが引っかかって。

島暮らし×仕事=地域おこし協力隊にたどり着くんですね!
それっていつ頃の話ですか?

2012年とか2013年ぐらいの話です。
その頃って地域おこし協力隊といえばお世話系、いわゆる草刈りとか地域の見守りみたいなことがメインだったんですよね。

今は地域おこし協力隊のミッションって多種多様ですけど、当時はかなり初期ですもんね。

そうそう。
私、関西人だから、どうせだったら西とか南のエリアが良いなぁって思って。
しかもお世話系じゃない業務内容が良い。
って思ってたところでヒットしたのが、鹿児島県薩摩川内市の地域おこし協力隊だったんですよ。

薩摩川内市の協力隊は当時どんな業務内容で募集してたんですか?

お世話系ばかりが主流の中で当時は本当に珍しかったんですけど、業務内容に「食の特産品開発」って書いてあったんですよ。
「面白そう!かっこいい!もはや協力隊っていう名前自体がかっこいい!!」って思って。

ちょいちょい「かっこいいかどうか」が、判断基準としてにじみ出てきますよね。笑

私、そんなもんなんですよ。
なんか申し訳ないわ!笑

いやっ!めっちゃ良いです!
そういう人の方が信用できると思ってます!笑

で、なんやかんや流れに任せてたら、「塩田さんって上甑島っぽいね」っていう判断になり、上甑島に地域おこし協力隊として着任することになりました。

甑島は着任初日まで行ったことがなかったそう(行動力と決断力すごい!)

地域おこし協力隊として憧れの島暮らしがスタート

ついに憧れの島暮らしが甑島で始まったわけですよね!
実際に島での暮らしを経験してみて、いかがでした?

島暮らしはやっぱりかっこいいなって思うことが多かったですね。

甑島での風景

なるほど!具体的にもう少し教えていただいても良いですか?

例えば、市役所の人達が台風養生をするために窓に木を打ち付けてるところとか。
道路の空いてる場所にイカを天日干ししてたり。
全部がかっこ良くて、写真撮りまくってました。笑

甑島での風景

私が発酵にたどり着いた理由

なぜそういう部分にかっこよさを感じるんでしょう?

自分には持ち合わせてない生きる上での知恵を持ってるって思うから、そこがかっこいいと思うポイントなんでしょうね。
生きるチカラの強さを感じるというか。
島の人達にはずっとリスペクトを持ちながら暮らしてました。

地域おこし協力隊時代の塩田さん

自分で作り出すことに対して、憧れがあったということですよね?

そうそう!
だから私は「発酵」なんですよ。
「自分で作り出す」っていうことに憧れていたし、やってみたかったから。

なるほど!
島暮らしの文脈から発酵につながるの、おもしろすぎる!
(ここまででもう十分かもしれない!まだいちき串木野出て来てないけど!)

いちき串木野との接点

協力隊として過ごした期間は、今振り返ってみていかがでした?

甑島での協力隊としての3年間は、すごく順調に楽しみながら過ごすことが出来たんです。
色々な事業者さん達と関わらせてもらって、商品を一緒に開発する仕事をたくさんさせていただきましたね。

協力隊の任期が終わった後、どのタイミングでいちき串木野市と接点を持つことになるんですか?

少しさかのぼって話をすると、協力隊時代の休みの日を利用して、地域の人と仲良くなるためにワークショップを開催してたんですよ。
例えば、みんなで味噌を仕込んだり、キムチを作ったり、それぞれ作ってきた保存食を交換する会をしたり。

上甑島での味噌玉づくりワークショップ

うんうん。

それをSNSでアップしてたら、「薩摩川内市の本土の方でもワークショップをやってほしい」という話をいただいて。
甑島から本土に行くためには、串木野港を経由して出てくる必要があるわけです。

あぁ!なるほど!!

今、発酵食Labっていうお店をやってるんですけど、このお店がある通りなんかまさに毎回通る道で。
本土に用事があるたびに串木野港を利用するので、薩摩川内市のことは行先の場所のことしか分からないけど、串木野港の近く(串木野の街中)で材料買ったり、船が出るまでの時間をカフェで過ごしたりしてるうちに、どんどん串木野のことには詳しくなってきて。笑

右側が発酵食Lab。この通りが毎回通る道だったそう

うんうん。

そうこうしてるうちに、いちき串木野市でも協力隊制度が導入されて、いちき串木野の協力隊の人達ともしゃべるようになって。
毎回ワークショップの道具を船に積み下ろしするのも大変になってきたので、本土側の宿&倉庫代わりにカッチェルを借りたんですよね。

同じ商店街にあるKACCHEL(カッチェル)

へぇー!

で、カッチェルでも発酵教室をやってみようと思い、串木野で発酵教室をスタートすることに。
それがいちき串木野市との最初の接点ですね。

おもしろすぎます。

甑島-串木野港の交通ルートが生活動線上にあったことが、塩田さんと串木野のつながるきっかけだったわけですね。

そうですそうです!

移住後の暮らし

レンタルスペースではなく自前の教室を持つことに

カッチェルでしばらく発酵教室を続けたんですか?

2015年にカッチェルでやり始めて、3年間ぐらい続けてましたね。
ただ、レンタルスペースを利用して教室をすることに限界がきて。

限界と言いますと?

共有で他の人と一緒に場所を使ってたので、そこがなかなか難しくて。
「全然掃除してないじゃん!」みたいなこととか..笑

なるほど。笑

とはいえ引き続き教室を続けるにしても商店街のこのあたりが良かったので、カッチェルの近くでどこかないかなぁって探してた時に、今は倉庫として使ってる発酵食Labの隣の物件に出会うんです。
値段も手頃だったので「やってみるか!」と思って、自前で教室を借りて発酵教室を始めることに。

教室の様子。手前が塩田さん

「やってみるか!」で実際に進んでいくパワーが素晴らしいですね..!!

実際に自前の教室を始めるんですけど、スペースとして小さかったので6人ぐらいしか入れなくって。
午前&午後に分けて、それぞれ6人ずつで教室をしてたんですけど、続けるうちに「これは身体がもたんわ」と思い始めてきて。
なので今は大き目のハコに移って、たくさんの人数でも対応できるような場所で教室をしてます。

現在のキッチンスタジオ

発酵食Labを始めるきっかけ

今まで発酵教室のきっかけや移り変わりを聴いてきたんですけど、発酵食Lab(店舗)を始めようと思ったきっかけを伺っても良いですか?

きっかけは主人が大けがをしたことですね。
主人は甑島出身なんですけど、地域のバレーボール大会で大けがをしたんですよ。

なるほど。。

パートナーの豊昭さんとは甑島で出会って結婚へ

けがをするまで、電気工事の仕事をしてたんです。
電柱登ったりしながら。
ただ、大けがをしてそういう作業が難しくなってしまって。

うんうん。

主人に何か仕事をさせないとなぁと思って。
「じゃあ店すっか!」みたいな。

工事中の発酵食Lab。元クリーニング屋さんが店舗&加工所に

店すっか..!!

そうそう。笑
特に何も深く決めずに、教室の隣も空き家だし、店にしちゃってそこで一緒に働いたら良いよなって。

発酵食Lab

「働ける場所が無ければつくっちゃえば良いじゃん」っていう考え方が最高です。

話聴きながら思ったんですけど、スタートする前は深く考えすぎないで、流れに身を任せながら考えるのが大事なんだなって感じました。

そうそう!
その時その時で最善を見つければいいんですよ。

直売所で飲める甘酒豆乳は季節のフルーツと組み合わせた物もあり絶品です(甘酒の概念変わります!!)

ストレスが溜まった時の過ごし方

休日の過ごし方も少し伺わせてください。
お休みの日って何されてますか?(というか休日と仕事の境目無さそう..)

休日は仕事してますよ!笑

やっぱり!
だと思いました。笑

あ!でも、私すぐサボりますよ。
しょっちゅう電話持たずにどっか行きます。
パラゴン行ってぼーっとしたり。

パラゴンへ行ったら絶対に食べてほしいチーズケーキと自家焙煎の美味しい珈琲

なるほど!
スマホ置いて出かけるの、絶対連絡取れないから良いですね。笑

あと、本当にどうしようもなく疲れてる時は、味噌を仕込む。

発酵食Labの味噌

味噌を!?

めちゃめちゃ良いですよ!
目の前だけしか見ない状態になれるので。
瞑想に近いと思う。

仕込んでる時って、頭の中ではどんなことを考えてるんですか?

なにも考えない。
味噌を作ってるっていう感覚じゃなくて、時間の経過に集中してるかも。

僕らがサウナに行くみたいな感じかもしれないですね。
デジタルデトックスしながら、頭の中空っぽにして時間の経過と身体感覚に集中するみたいな。

うんうん。
だから困った時に作るんですよ、味噌は。
そうやって作った味噌、美味しいですし。笑

発酵食Lab直売所で販売されている味噌やキムチ

もっと色んな人が入ってきやすい場所にしたい

最後に、いちき串木野市のもっとここが良くなったら楽しいのになぁって感じることを教えてもらって良いですか?

うーん..
もっといろんな人が入ってきやすいような場所にしたいですね。
お店とかもっと増えてほしい。

うんうん。

もっと面白くしていきたいんですよ。
自分のためにね。
自分自身がもっと面白くなりたいから。

笑顔で赤裸々に語ってくれた塩田さん(ありがとうございます!!)

(主語が自分なのが本当に最高です)

やっぱり人がいないと面白くないですもん。
だからもっとお店が増えたら良いのに、とは思います。
人と人のつながりをきっかけに、どんどんまちに関わる人が増えていくようなカタチが理想だなって。

人に惹きつけられて集う街、素敵ですよね。
塩田さんに引き寄せられて「私もチャレンジしたい!」って思う人、たくさんいそうだなって思います。

ふらっとチャレンジできる場所が少ない

ありがたいことに、友達で「私もいちき串木野で!」って言ってくれる人は居るんです。
ただ、一緒に物件を見に行って気づいたんですけど、チャレンジの一歩目を踏み出しやすいような物件がほとんどなくて。

というと?

建築的に改修工事が難しいものだったり、そもそも大きく手を入れないと使えないような物件ばかりで。
「とりあえずチャレンジしてみよう!」が出来にくいなぁって思っています。

「初期投資で何千万必要です」なのか、「一旦数十万でスタートしてみて、軌道に乗ってから設備投資しよう」なのかで、チャレンジのしやすさって大きく変わりますもんね。

死にゃせん!失敗したら辞めればいいんだもん!

塩田さんに聞いてみたかったことがあって。
僕、お店の立ち上げとかって少し興味あるんですけど、やるなら小さく始めて少しずつ育てるみたいな感じがいいんですかね?

そうなん..でしょうね。
どうしたら良いんですかね?笑

(逆に質問を返されてしまった..)

私、目の前のことしか考えてないので、戦略的にどうこう始めてないから分かんないんですよ。笑

なるほど!笑
そんなに考えすぎず、とりあえずやってみてから考えればいいんですね!!

そうそう!
死にゃせん!
ダメだったら辞めればいいんだもん!

たしかに!
深く考えすぎることを辞めます!

先のことなんて分かんないんだから!
そのときそのとき。
ですです!